※生徒×先生な現パロ
※モブ女性が出てきます

whiteout

 高校の保健室というのはそれほど賑わう場所ではない。そもそも安静にすることが求められる空間であるし、小学校や中学校よりも怪我で運ばれて来る人数も少ない。シーザーが保健医として勤める高校はそれなりに有名校で、低くない倍率をくぐり抜けて入学してきた生徒だけが集まるために、授業をエスケープして保健室でだらだら過ごすという生徒もほとんどいなかった。
 シーザー目当てに保健室に通うジョセフも放課後になってから訪れるのが常で、他に人が居なければ周りの迷惑だからと言って追い返すこともできない。きちんと授業に出席していて、家に帰っても家族は誰もいないという話を聞いてはシーザーもそう邪険に扱うわけにはいかなかった。そうやって彼が拒めない理由をいくつも重ね、自分の要求を通してしまうのだからジョセフというのは悪い男だった。

 爽やかな風が吹く夕暮れ、シーザーは一人の女子生徒と向き合っていた。彼女は陸上部の二年生で、練習中に転んで膝をすりむいてしまったのだという。土で汚れたので先に洗ってきた、と言う彼女の膝は血と水で濡れている。生徒を座らせたまま自分は膝をつき、濡らしたガーゼで傷口に慎重に触れるシーザーの呼吸はわずかに乱れていた。開いたままの窓からは運動部の生徒たちの声が聞こえる。丁寧な治療を受けながら、件の女子生徒は明るい声を降らせていた。

「シーザー先生って本当にかっこいいんですね! クラスの子が言うから半分疑ってたんだけど、まじなんだあ」
「ありがとう、シニョリーナ。君だって魅力的だよ」
「やだぁかっこいい! 先生モテるでしょ? 彼女とかいるんですか」
「……すまないが、そういう話は……」

 きゃあきゃあとはしゃぐ彼女はアイドルに向ける視線と同じものをシ―ザーに注いでいる。体中を駆ける悪寒に似たしびれと戦いながらシーザーが口にした言葉は、カーテンが勢いよく動く音に遮られた。
 ベッドの周りに巡らせたカーテンから顔を出したのは、そこにごろりと転がるジョセフだった。本来枕がある位置とは反対側に頭を載せ、その体のほとんどはカーテンの影で見えない。
 二人が掛けるデスクに顔を向け「シーザーの恋人なら知ってるぜ」と底のしれない笑みを浮かべるジョセフに二人は色めき立った。女子生徒の顔は期待に輝き、反対にシーザーの顔色は蒼白に変わる。思わず立ち上がりかけるシーザーを制し、彼は口を開いた。

「シーザーの恋人は、お、れ」
「……ジョジョ!」

 一瞬の沈黙ののちに響いたのはシーザーの怒りを含んだ声だったが、直後椅子に掛けたままの女子生徒が笑い声を上げる。反射的にシーザーがそちらを見ると、彼女は「やだあ、もぉー。それじゃ諦めなきゃ」と楽しそうに言って、ジョセフの発言をジョークとして受け止めたのだとわかった。
 気を削がれたシーザーはそれ以上彼になにか言うこともできず、やりかけていた治療に専念する。女王を守る騎士のように恭しく跪いて傷に触れるシーザーをジョセフはじっと見つめていた。

「えっと、ジョースター先輩ですよね? なんで保健室にいるんですか」
「あれ、おれってやっぱ有名人? ほら、シーザーちゃんの彼氏だからお仕事終わるの待ってるの」
「もう、またまたぁー」

 シーザーの頭の上で交わされる会話にころころと笑った彼女は、それ以上問いを重ねることはしなかった。ジョセフの母であるエリザベスがこの学校の教員であることは周知の事実であったし、それを思い出して納得したのだろう。シーザーにとっては肝の冷える会話だった。

 壁にかかった時計を見上げながら「今日はいっぱい練習できると思ったのになー」と零す彼女に、ジョセフは「早く手当してやんなよ」と気安く言う。その言葉にシーザーが向けた射抜くような視線は、女子生徒が座る位置からは見えなかった。こめかみを汗が伝うのを感じながらシーザーは内心歯噛みする。

 数十分前に保健室を訪れたジョセフはいつものようにシーザーをからかい、気まぐれに触れては彼の集中を奪った。いいかげんにしろ、と文句を言いかけるとジョセフは鞄からピンクのおもちゃのようなものを二つ取り出し、「今日はこれで遊ぼうぜ」と笑った。
 なんだそれ、とシーザーが素直に問えばジョセフは彼を簡単に押し倒してボトムを剥ぎ取る。誰かに聞かれたらと思うと抗議の大声も上げられないシーザーは体格で勝るジョセフに押さえつけられ、ろくな抵抗もできないまま後孔に指を埋められて喘いだ。唾液で濡らした指で慣らされ、なしくずしに行為が始まるのかとシーザーが諦めにも似た思いを抱いたところで予期せぬ刺激を与えられて思わず声を上げる。体温と違う温度で割り開かれ、なに、ともう一度聞くとジョセフは彼の上でニヤリと唇を歪め、「ローター」と簡潔に答えた。
 そのまま彼は体を離し、「おうち帰るまで抜いちゃだーめ」と宣言のような高らかさで口にした。ふざけるな、と言いかけたシーザーはあまいキスを贈られて目を見開く。ジョセフの深い瞳に至近距離から「……抜くなよ?」と念押しされ、シーザーの腰は情けなくも砕けた。ジョセフに促され着衣を正したところに来訪者があり、膝に怪我をした女子生徒が現れたのだった。

 思えば、彼女が保健室を訪れるのもジョセフには計算できていたに違いない。陸上部の練習風景は校舎から見えるし、転んで怪我をすれば保健室に向かうのは当然の流れだ。ドアがノックされるよりも一瞬早くベッドに転がったジョセフの手にはピンク色のおもちゃの片割れ、ローターのリモコンが握られている。体内の異物感に浅く息をつくシーザーは、いつそのスイッチが入れられるかと恐怖の汗で肌を濡らした。

 傷口を覆い、固定のための包帯を探す。怪我をした本人は「すり傷だし、包帯なんて大げさすぎる」と嫌がったが、傷を早く治して練習に専念するためだと説明すれば素直に従った。体内に根ざす異物感を無視して立ち上がったシーザーはデスクに置いた常備薬の箱を探ったが、目当ての物は見つからない。いつの間に切らしたのか、と何の気なしに顔を上げたシーザーはジョセフと視線が合い、瞬間に確信した。包帯はつい先ほどまで箱に収まっていたはずで、それを隠したのはジョセフに違いない。彼の顔に浮かぶ笑みがなによりの証拠だった。

「シーザーちゃん、包帯のストックなら上の棚だぜ。おれの方が背でかいし、取ってやろうか?」

 ベッドから跳ね起きたジョセフが一見無害そうな、その実策略を張り巡らせた笑顔で言う。デスクについた手で体重を支え、しかめそうになる顔を無理にこらえるシーザーはその申し出を軽くはねのけようとしたが、ぐいと肩を押されて一瞬声が詰まった。よろけた足が丸椅子に当たりがしゃんと音が立つ。「ジョジョ」と呼びかけようとした声はかすれ、失敗に終わるだけだった。

「いいからシーザーちゃん、座ってて?」
「……〜ッ!」

 そのまま体重をかけられ、力づくで椅子に座らされたシーザーはびくりと体を痙攣させた。入り口に浅く飲み込んだローターが座面に押し付けられて刺激を与える。かろうじて声は抑えたが、もたらされる異物感ににわかには口もきけそうにない。幸い、女子生徒は棚に手を伸ばしたジョセフと明るく言葉を交わしていて、唇をおののかせるシーザーには気づかないようだった。

「……ッ、く……!」

 突然与えられた強い刺激にシーザーは目を見開いた。ヴヴヴ、とかすかに聞こえる振動音は鼓膜を震わせるものだろうか、体を伝わるものだろうか。埋め込まれたローターが振動を始め、すでに性感帯として開発されているシーザーの内壁をなぶる。荒くなる呼吸に勝手に口が開き、慌てて手のひらで覆った。
 さすがに、小刻みに体を震わせるシーザーの異変は気づかれたようで、ほど近いところに座る女子生徒が心配そうに声をかけた。声を出せば悟られそうで何も言えない彼の横に包帯を手にしたジョセフが立ち、「センセ、どうかしたァ?」とわざとらしく心配してみせる。椅子に掛けて前かがみになるシーザーの腰に触れ、「ああ」と芝居がかった声を上げた。

「シーザーちゃん、もしかして……」

 含みをもたせたジョセフの言葉にシーザーの鼓動はさらに速くなる。まさか暴露するようなことは口にしないだろうが、シーザーをいたぶるのが楽しみだと自ら言うような男だから楽観はできない。おののくシーザーの瞳は懇願するように見上げたが、ジョセフの目は意地悪い形にゆがんだままだった。

「――腰痛いんだろ?」
「は……?」

 言われたシーザーの唇から間の抜けた息が漏れる。身構えていただけに、のんびりとした言葉に肩透かしを食った。「無理に座らせて悪かったな、そんなにひどいとは思わなかったぜ」と笑うジョセフの言葉は言うまでもなく女子生徒のためのものだ。案の定、すました顔のシーザーが腰を痛めているというギャップに興味を示した彼女が食いついてくる。その場を取り繕うためだけの会話を聞きながら、シーザーの意識は体内で振動を続ける異物に向けられていた。

「……あぁ、ギックリ腰って若い人でもなるって聞いたことあります! 調子が悪いのにごめんなさい先生、大丈夫ですか?」
「い、いや、気にしないでくれシニョリーナ……」

 ジョセフに適当なことを吹きこまれ、彼女の顔色が憂うものに変わる。シーザーがまともな様子を装えないのはとても口にできない理由からだし、それなのに生徒に心配されてますます顔を上げられない。そんな彼の様子を気遣ってか、女子生徒は「やっぱり包帯なんていらないです。あたし帰るから、先生も早く治してくださいね」と爽やかに笑って保健室から出て行った。

 引き戸が小さな音とともに閉められる、その瞬間にローターの振動が強くなってシーザーは強く唇を噛んだ。扉一枚隔てたところに彼女がいると思うと声を出すことはできない。こらえていた涙が視界を濡らすのを感じながら、立ったままのジョセフを見上げる。口元を覆ったままに強い視線で訴えれば、なだめるように目もとにキスが落ちた。

「てめ……っ、なに考え、て……」

 ローターの刺激にあからさまな声を出さないようにするのが精一杯で、荒い呼吸に言葉が途切れる。ジョセフは答える前に戸を開け、保健室の入り口にかかっている在室表示プレートを「不在」に切り替えた。そして戸を閉め、内側から鍵をかけてしまえば誰も入ってくる気遣いはない。ためらわずに密室を作り上げたジョセフの瞳は夕日の中でサディスティックな色に輝いていて、非常に不本意ながら、シーザーはその輝きに興奮が煽られるのを自覚しないわけにはいかなかった。

「シーザーちゃんこそなに考えてんの、怪我してる生徒の前でおっ勃てちゃってェ」

 露骨な言い方をしたジョセフはシーザーの目の前に立ち、椅子に掛けたままの彼に足を伸ばす。足の間に割りこむようにして靴の甲で刺激すれば、すでにシーザーの中心が熱を持って膨らんでいるのが知れた。ゆるい快感に耐え切れず、息を詰める音が二人きりの保健室に響く。押し付けるように足を動かされてシーザーの喉が反った。

「ぁ……! ぅ、ジョジョ……やめ、ンッ」
「お仕事中にローター入れて興奮してんの、やーらしー」

 誰のせいだと思っている、と言ってやりたくても与えられる刺激の大きさにそれも叶わない。シーザーの前に立ったままのジョセフは体こそ大きいが自分より年下で、生徒で、そんな彼に足で高められているという事実が倒錯的な興奮をもたらした。ジョセフの言うとおり時間はまだ早く、窓からは部活動の練習に励む生徒の声が遠く聞こえる。背徳的な行為にシーザーの脳は振り切れそうに揺れた。

「ンぅ、ふ……ッ」
「なァに、生徒に足でぐりぐりされて気持ちいいんだ? センセ、サイテー」
「や、も……っあぁ!」

 ジョセフが楽しそうに笑った直後、ローターの振動を最大にされてシーザーの体が跳ねた。体を駆ける快感に震えて視界が定まらない。直接触れる前に彼が達してしまったことを知って、ジョセフはつまらなそうに唇を尖らせた。

「もうイっちゃったわけ? エロすぎじゃねえの、シーザーちゃん」
「……っぅ、も……早く、止め……!」
「あ? そーね」

 シーザーの体内に埋まったローターは達した後も容赦ない刺激を与えて彼の体を苛んだ。それを訴えるとジョセフは簡単にいなして、脱力したシーザーの体を持ち上げて担ぐ。挿入されたままの異物を気にして動けないまま数歩分運ばれ、カーテンが半分閉まったままのベッドに放り投げられてシーザーは天井を見上げて一瞬息を詰めた。

 なにか言う前に押しかかられ、器用な手があっという間にシーザーのベルトを抜き取る。止める間もなく、精液で濡れた下着があらわになって羞恥に顔が熱くなった。布地を下ろされる感触に粘った音が立つ。薄暗い室内に独特の匂いが広がって、不快だと思うのになぜかジョセフの唇は弧を描いていた。

「我慢できなくってお漏らししちゃった? ずいぶん敏感になっちゃったねェ」
「い……から、抜いて、くれ……!」

 揶揄を気にする余裕もなく懇願する。「オーケーオーケー」と朗らかな声で言ったジョセフはシーザーの足から布を完全に取り去って放り投げた。ベッドの下の床に落ちる音を聞きながら膝を大きく開かされて期待に喉が動く。すべてを晒した格好に抵抗を抱くよりも、この先の快感を求めてしまうほどには彼に慣らされていた。
 ジョセフの指が肌にごく近いところを探るのを感じる。挿入される前に見た性具は丸い卵型で、一端に細いループがついていた。それが自分の体から出ていると思うと情けなさが勝るが、ジョセフの瞳はぎらついたままで萎えた様子もない。いまだ振動を続けるローターの刺激をきつく瞑ることでやりすごしていたシーザーは、それが体の中で動く感覚に思わず目を開いた。咄嗟に身を起こそうとしても力の抜けた体はジョセフの腕一本でたやすく押さえこまれてしまう。シーツに頬をつけながらシーザーは喘いだ。

「ァ、や……止め、ッ」
「ンー? 抜けって言ったのはシーザーちゃんだぜ?」
「この、スカタ……ひ、んぁあっ!」

 最大レベルの振動に設定されたまま容赦なくローターを引きぬかれて抑えきれない声が漏れた。すでにシーザーの体は後ろで快感を得られるよう調教されていて、一度達したあとの体にその刺激は強すぎる。かといって絶頂にのぼりつめるには足りず、脱力した四肢が快感に揺れた。
 すっかり熱を取り戻したシーザーの性器を片手でもてあそぶジョセフの動きには明確な欲望の色があった。幹をしごき、指先で先端を苛む彼の中心もとっくに張り詰めている。前だけ寛げて取り出した熱塊を押し当てるとシーザーの視線が動いた。

「やらしいシーザーちゃん見てたら我慢できなくなっちゃった。――挿れるぜ」
「ぇ、あ、だ、だめだ……!」

 言葉だけでなく、肌に触れる感触からもジョセフが限界であることは察せられる。一瞬意識を白く飛ばしていたシーザーは、差し込む夕日の明るさに慌てて押しとどめた。窓の外からはにぎやかなざわめきが伝わり、同時にこちらの物音も聞こえてしまうのではないかという恐怖が今さらにシーザーを縛る。静かな室内とは違い、屋外ではよほど注意しない限り部屋の様子を知ることはないとわかっていても、一度生まれた懸念はなかなか消えそうになかった。

 体の下でもがき始めたシーザーをジョセフは苦々しく見下ろす。彼相手に全力を出すことはないシーザーを力ずくでねじ伏せることはおそらく可能だろうが、今はジョセフにも余裕がない。それよりも手っ取り早い方法を、と考えた彼は放り出したまま忘れていた枕に手を伸ばした。
 本来あるべき位置と反対側に投げ出されたそれはシーザーよりもジョセフの側に近い。枕の下を探れば、いつもはシーザーのデスクの上に置かれていて、つい先ほど姿を消したもの、ひと巻きの包帯が取り出された。

 彼が手にする白い布を目にしたシーザーは疑念を確信に変えて、やっぱり隠したのはおまえかと噛みつくがジョセフは取りあう様子もなく包帯を両手に広げる。
 深い色の瞳を意地悪い形に細めて、シーザーの両腕を引き寄せると束ね、器用に包帯で拘束を施した。重ねて縛った手首を持ち上げて頭の上を通し、垂れた布をベッドヘッドに結びつけるともう動かせなくなる。あまりにも鮮やかな手つきで両手の自由を奪われたシーザーは一瞬のめまいを覚えた。

「……な、にして」
「そういう、抵抗するフリとかうっとうしいんだよねェ。おめーは素直によがってりゃいいんだよ」

 見下ろしたままに言い放って、ジョセフはむき出しの性器をもう一度押し付ける。期待に高められた肌はその刺激も敏感に拾ってシーザーの肩がすくんだ。
 ローターによって開かされた後孔は誘うようにひくひくと震える。ゆっくりと押し入れられて、両手を戒められたシーザーには抵抗するすべもなかった。

「ひ、ぁっ……! ン、う……!」
「は……中、びくびくしてる。きもちい」

 おもちゃなどとは違う、圧倒的な熱量に貫かれてシーザーの口から上ずった悲鳴が漏れた。のどかな陽光に似つかわしくない高い声が一瞬響いて、声を殺すように唇を噛む。堪えるように眉を寄せるシーザーに構わず、最後まで収めきってジョセフは熱い息を吐いた。

 両手を持ち上げた状態で固定され、シーザーの体は常よりも無防備に晒されている。その気になれば包帯くらい引きちぎることもできるだろうに、ジョセフがもたらした拘束というだけで彼にとっては鋼鉄よりも固い手枷になった。そのせいで声を遮ることもできず、漏れる息をこらえるために結ばれた唇は力が入りすぎて震えている。彼の必死の努力を理解しながら、ジョセフはゆっくりと腰を使った。

「ン……! く、……ッ」
「なァに、声我慢してるの」

 わざと口にしながら、彼の唇を指でなぞる。見上げるシーザーの瞳は濡れていて、そういうところがいじめたくなるのだと教えてやったことはない。
 薄い皮膚の間にジョセフの指が入り込み、無理矢理に口を開かされて反射的な恐怖にシーザーの体がこわばった。差し入れられた二本の指は好き勝手にシーザーの口内を荒らし、薄い舌を引きずり出すように挟む。気まぐれに下肢を穿たれてくぐもった声が喉を揺らした。
 彼に慣らされた体は深く考える前に馴染んだ行動を取る。長い指を別のものに見立て、唾液を絡めて舌を這わせると満足気な笑みが返った。濡れたまま引きぬかれ、その手が立ち上がったシーザーの性器に触れると閉じることを忘れた唇から喘ぎ声が落ちる。唾液によって滑りを増した手でしごかれて、耐え切れない快感が理性を浸していくのがわかった。

「なんかいつもより感じてなァい? シーザーちゃん、拘束プレイ好きなんだ」
「ちが……っん、ぅ」
「ふーん、いつもより締め付けすごいんだけど」
「……ぅ、く……」
「ほーんと、スキモノだよなァ。次は手錠つけてやるよ、首輪も似合いそうじゃん」

 言ってジョセフは獰猛な笑みを浮かべる。その言葉と表情に熱が煽られるのをシーザーは認めた。とっくに知られてしまっている弱点を狙うように穿たれて、浮いたつま先が空を掻く。酸素を求めて開く唇からかすれた声が漏れるのはどうしようもなかった。

「ひ、ン……! ……ッ、く」
「そういう顔、すげえそそる。もっと見せろよ」
「うぁっ……!」

 勝手なことを言ったジョセフが手を伸ばし、シーザーの顎を捉える。無理矢理に視線を合わされて強い羞恥と興奮がシーザーの脳を焼いた。

 彼の奔放な振る舞いに翻弄されてばかりのシーザーが強く抗えないのは、結局どうしようもないほどジョセフに惚れ込んでいるからだった。彼が求める限りシーザーはその心と体を与え続けるし、ジョセフの前では職業倫理も道徳も投げ捨てられる程度の重さしかない。
 一方で、このままでは駄目だという思いも常に胸のうちに抱えている。もし露見すれば、シーザーはおろかジョセフの将来もめちゃくちゃになることだろう。二人が関係を続けていることで、なによりもジョセフの未来を損ねているのではないかと考えるたび足元が崩れるような感覚を味わう。高校生でしかない相手に重すぎる思いを抱いて、頼りない関係をさらに危ういものにしているのはシーザーの方だった。

 春が来ればジョセフは高校を卒業して、去っていく。つなぎとめるすべを知らないシーザーをあざ笑うかのように彼の手には包帯が巻きつき、誰よりも恋しい相手に触れることもできなかった。

「……なァんか余計なこと考えてなーい、シーザーちゃん」
「っ、あぁっ!」

 咎めるような言葉とともに深くえぐられてつい声が漏れる。ジョセフは見下ろしたままにニヤリと笑い、顎に添えた親指で唇に触れながら「その声、好き。我慢なんかすんなよ」と強請った。だが、言われたシーザーはかえって強く唇を噛む。それが気に入らなかったのか、両の膝裏を抱えられ容赦なく熱がねじ込まれた。体をジョセフで満たされて快感と愉悦がまじりあう。強い刺激に息を詰めるシーザーの目尻には透明な雫が乗っていた。

 ジョセフが好むという声をこらえるのはただの意趣返しだった。だって彼は、シーザーに好きだと言ったこともない。捧げるだけの熱情を返してくれない相手にそれくらいの意地悪は許されてもいいだろう。
 シーザーのそんな考えなど知る由もないジョセフは蕩けた体を苛む。もっと体温がほしいと思うのに、手首をベッドヘッドに固定されたままでは指は空を切るだけで、彼の背にすがることもできない。それがジョセフの望みでないことを祈るほどには彼に溺れていた。