ひどい彼氏

 おれはとても疲れていた。今日に限った話じゃあない。一ヶ月でおれたちの持てるすべてを教えてやる、と意気込む師範代たちにしごかれ続けてもう半月になるだろうか、ちょっとくらいの弱音なら許されるだろう。心身ともに疲労困憊で、自分の部屋まで辿り着いたあとはベッドに倒れこむのが精いっぱいだった。

 毎朝スージーQがきれいに整えてくれているシーツに埋もれながら一日の疲れを逃がすように力を抜いた。部屋に戻る前に食事を詰め込んだせいで眠くなる。その猛烈な睡魔が全身に広がる、ほんのちょっと前に控えめなノックが響いた。
 数呼吸ぶん置いてから部屋に入ってきたのはシーザーだ。顔を上げなくても足音でわかる。リサリサは必ずヒールの高い靴を履いているし、スージーQならもっと騒がしく駆け寄ってくるはずだ。師範代たちならわざわざ寄ってくることもなく、こちらを呼びつけるだろう。
 正体がばれているとも知らないだろうシーザーはベッドのわきで立ち止まり、いつもより抑えた声で「寝てるのか?」と聞いてきた。本当に寝てる相手なら返事をするわけもないのに、半分は無駄な問いかけだとわかっているんだろうか。声を出す代わりに寝返りを打って答えた。

「なんだ、起きてたのか。寝ちまったかと思ったぜ」

 頼みもしないのに兄貴風を吹かせたシーザーはそう言って笑った。おれの左わき腹のあたりに腰かけた男にベッドが小さな音を立てる。これだけガタイのいい男二人を乗せてもへこたれない頑丈さは家具職人を褒めてやりたいほどだ。
 ずいぶん遅くまで頑張ってたじゃないか、とあたたかな言葉とともに頭を撫でられるのに抵抗せず目を閉じた。この関係になる前は子ども扱いを嫌がってはねのけていたというのに、我ながら現金かもしれない。口では冷たく言っていたときだってシーザーの手のひらは心地よく感じていた。

 下ろした瞼の裏には血の色が透けている。いくらもしないうちに薄闇の視界に影が落ち、唇にあたたかなものがふれた。実に予想通りな男だ。ゆっくり目を開けば、心からのいとおしさを溶かしこんだような視線にぶつかる。本人は女のような、あるいは女に対するような甘ったるい言葉は口にしないものの、その代わりに表情ですべてを伝えてしまっているのだから意味がない。シーザーがおれを好きなのはわざわざ聞くまでもなく、それこそずっと前からわかっていることだった。

 おれが目を開けたことに気を良くしたのか、わずかに端が持ち上がった唇がまた近づいてくる。その弾力をしばらく味わってから少しだけ口を開けば、待っていたように濡れた粘膜がすべりこんできた。長い舌が器用に動いて露骨な音を立てる。駆け引きなら負けるつもりはないが、こればかりはしばらく勝てそうにない。悟られないように金色のまつげを見ながら、キスのときは目が隠れるのが残念だと思った。

 満足したのだろう、身を起こして体を離したシーザーの瞳には妙な輝きが宿っていた。ここがおひさまの下なら似つかわしくないようなギラギラした光だ。欲情しきったようすのこいつには悪いが、片手をつきだして犬にするように『待て』のジェスチャーを向けた。心なしか、漏れだす吐息も甘く聞こえる。

「夜這いたぁずいぶん積極的じゃねえの、シーザーちゃん?」
「言ってろ。ほら、早く脱げ」
「だからァ、ちょっと待てっての」

 シャツを脱ごうと手を掛けるシーザーはきょとんとした顔を向けた。こういう、思い込みの激しいところも悪くないと思い始めている。どころか、ちょっとかわいいと思ってしまっているあたり重症だ。シーザーの悪い癖がうつっちまったのかな、と反省しながら言いたかった言葉を押し出した。

「今日はしない」

 時間にして1秒ほどの短い言葉にシーザーの動きが止まった。どんな反応を見せるか、シミュレートしているあいだにシャツを持ち上げる手に力が入るのが見える。案の定、噛みつくような声が降ってきた。

「きさま、昨日もそう言ってただろう!」
「しかたねえだろ、こっちは毎日キッツイ修業でくたくただっつうの!」

 負けじと荒っぽく言い返した。このやりとりだけならまるでおれが軟弱なようだが、この二日に限って言えばそれは正確じゃない。たしかにシーザーは先に波紋の修業を始めていたが、今の実力ならそれほど差はないはずだ。それがどうしておればかり疲労困憊なのかといえば、師範代から出された課題が意地悪だったというだけだ。
 昨日からずっと、繊細なコントロールを必要とする試練ばかりが出されている。波紋の微調整というのはおれが苦手とするところで、逆に割れないシャボンを操るシーザーにとっては得意分野だろう。そういうわけで、日が落ちたあとも追加課題を課されたおれを尻目にこいつは悠々と屋敷に戻り、のんびり飯を食っていたはずだ。逆恨みに近いとわかっていてもつい当たりがきつくなる。今すぐ休みたいのは心からの本音だった。

 服を脱ぎかけていた手を下ろしたシーザーはなにか考えこむように視線を落としている。これはよくないサインじゃないかと気づいたところで思いつめたような顔がこっちを向いた。少し下がった眉は真ん中にしわが寄っている。シーツに投げ出したおれの手をつつむように体温が触れた。

「…………ジョジョ、おれが嫌になったのならそう言え」
「なんでンな話になるんだよ! おれはただ、疲れてるから……」
「おれに魅力を感じないんだろう、無理するな」
「そうじゃねえって……あー、くそ」

 腹筋に力を入れて無理に体を起こし、一人で話を終わらせて立ち上がるシーザーの手首を掴んだ。全身が休養の必要性を訴えているが、悲壮な顔つきのシーザーをこのまま放っておけるはずがない。重力に逆らわずベッドに沈めば腕を引かれたシーザーがよろけて倒れこむ。金髪の重みを胸のあたりに感じながら最大限の譲歩を示した。

「……おれは動かねえからな」

 それしか言わないでも色事に慣れたこいつには伝わったらしい。ぱっとこちらを見上げた顔には見間違えようもないほどの喜色が浮かんでいる。単純なやつだな、と呆れに近い思いが顔に出ないよう少しばかり苦労した。



 濡れた粘膜が這う感触に背筋が震える。本当に今日はぜんぶやってくれるつもりらしく、だらしなく投げ出したおれの両足の間にはシーザーの頭が入り込んでいた。亀頭を舌が往復する動きについシーツを握りそうになるのを我慢する。乱暴と言える流れで持ち込まれ、簡単にその気になってしまうのは悔しかった。

 そんな抵抗を知ってか、シーザーのもたらす愛撫は的確におれを追い詰めた。性器を飲み込んで乱れる呼吸も、口の端からこぼれるかすかな喘ぎも、いつもならつとめて押し隠そうとするのに今日に限っては見せつけるように大サービスしてくれるものだから性格が悪い。わざとらしい水音にも反応してしまって、シーザーの口の中のおれはもうガチガチだった。
 吸い上げる動きに合わせてどうしても腰が浮いてしまう。背中をクッションに預けた今は膝の間でうつむく金髪が見下ろせた。視線を感じたのか、不意に顔を上げたシーザーと目が合う。その瞬間にあわい緑の瞳が細められ、とびきりセクシーな表情に煽られるのを認めないわけにはいかなかった。

「……ッは、まだ気乗りしない、か……?」

 唾液と先走りで濡らした唇でそんなことを言うんだから、これはもう、わかってやっている。そんなことは聞かれるまでもなくおれの息子を見れば一目瞭然だ。なのに答えるまでは続けないと言うかのように、吐き出した性器の先端を撫でるだけでおれが口を開くのを待っている。いい性格してるぜコノヤロウ、とは顔色に出さずに余裕ぶった表情を作った。

「……あー、シーザーがもっとやらしく誘ってくれたらやる気になっちゃうかもォ?」

 わざとらしい挑発で返せばシーザーの顔には「上等だ」と書いてある。嫣然と笑みを浮かべるのを意外な気分で見下ろしていると、幹に軽いキスが落とされた。小鳥がついばむような動作を繰り返したシーザーはおれの方を見つめながら舌なめずりしてみせる。はっきりと誘う仕草に下腹が熱くなったのは隠しようがなかった。

 たっぷりと唾液を乗せた舌がおれの輪郭をなぞるように動き、先端でアイスを舐めるように二三度往復した。照明を落としてもいないから、赤い粘膜が濡れた跡を残すのまではっきり見える。それがすべてこちらを見上げたままなのだから体は素直な反応を返した。さらに大きさを増した性器にほおずりするような仕草を見せ、うっとりと細められた瞳にはおれしか映っていない。あからさまに媚びてみせるのに煽られるのはうまく操られているようで、唇を強く結んでやり過ごした。なんとか気を逸らそうとしても、絶え間なく与えられる刺激がそれを許してくれない。興奮を殺すように手の甲を口元に強く押しつけた。

 シーザーの方はイかせるというよりおれを煽ることを目的としているようで、根元に置かれた手はさっきから動いていない。唇と舌を押しつけ、その合間に上目遣いで見上げるのに口の中がからからになった。これで男の経験はないっていうんだから爛れている。こっそりフェラの練習でもしてるならかわいげがあるんだが。唇をいっぱいに開いて性器をほおばる顔には楽しそうな色があった。
 このままシーザーの頭を掴んで思いっきりぶちまけたいという誘惑と戦う。今さら何に躊躇するんだ、早く楽になっちまえという悪魔のささやきにぎりぎりと奥歯を噛んだ。シーザーが気乗りしない日はどんなに泣きついたって頼み込んだってまるっきり無視されるのに、おれが「今日はしたくない」と言っても強引に流されるなんて悔しいだろう。男の本能に逆らい、下腹に力を入れて射精の衝動をやり過ごす。露骨に目をそらすのはなんだか負けたようだから、悟られない程度に視線を上向けた。

 思ったよりしぶといおれに焦れたんだろう、スラングのような短いフレーズがシーザーの口から漏れた。それからすぐに金具が触れ合う音が聞こえ、おぼつかない視界にシーザーが下着を下ろしているのが映る。相変わらず奉仕を続けながら、自分のペニスをしごき始める姿に体温が上がった。
 シーザーが部屋に乗り込んできてからおれはこいつに触れていない。つまり、シーザーがすでに勃たせているのは身体的接触ではなく精神的な興奮によるものだ。その理由といえばひとつしか浮かばず、おれのを舐めながら欲情していたのかと思うと目の前の大男が途端にかわいく思えてくる。シーザーはシーツに膝をついておれを咥えているから、その手の中がどうなっているのかが見えないのが残念だった。

「……もう我慢できなくなっちゃった、シーザーちゃん?」
「…………どっかのだれかのせいで、な……!」

 強い語調もそんなにやらしい顔をしてたら効果はない。伸ばされた手が動くたび小さな音が立つんだからそうとう切羽詰まってるんじゃないだろうか。早くイきたいという思いと、もっと焦らしてやりたいという意地悪な考えが同じくらい膨らむ。こうなったらどっちが先に限界を迎えるか、我慢比べだ。二人きりの夜なんて本来はもっと甘い時間であってもいいはずだが、性欲も征服欲も本能の一部なんだからしょうがない。向けられた視線はほとんど睨んでいるようだった。

 我慢比べに負けたのはやはりシーザーだ。唾液で濡れたおれを吐き出し、シーツの上で丸まったズボンを蹴落としてにじりよってきた。膝立ちでおれの腹をまたいだところで腰を折り、鼻先がふれあいそうなほど顔が近づく。その目には苛立ちが浮かんでいて、すごみのある視線に背が冷えた。こいつはときどき恐くなる。後ろ手に伸びたシーザーの左手がおれの息子を握り、ぐっと力が込められた。

「――〜痛ッデェ〜〜!?」
「いっちょまえに焦らしやがって、スカタン!」

 だからおれはしたくないって言ってたのに、理不尽じゃないだろうか。罵声を降らせたシーザーは身を起こして手を添えたまま先端を尻にあてがう。唾液でたっぷり濡らされた性器は皮膚をすべるが、男同士のエッチはそれだけじゃあ準備が足りない。まだ無理だろ、入んねえって、と騒ぐおれに見下ろす高さから返事が返った。

「おまえが戻ってくるまでおれがなにもしないで待ってたと思うのかよ、スカタン……」
「……今、なん……ッ、ン……!」

 聞き返す前に背筋を突き抜けた痺れに言葉が出なくなった。ずるずると飲み込まれていくのに酸素が足りなくなって口を開ける。一息には収めきれず、途中で大きく呼吸したシーザーの目には水の膜が薄く張っていた。半端に突っ込んだ形のそこはすでにやわらかく綻び、気持ちいい締めつけを与えてくる。腹の上に置かれた手の熱さを感じながら中断させられた疑問を口にした。

「……おれが居残りさせられてた間、自分で慣らしてた……とか?」
「…………言わせる気、かよ……ッ」

 そう返したシーザーはどこか悔しそうに見える。てっきり優雅に晩メシでも食ってるもんだと思っていたのに、こんなことなら追加課題なんてさっさと片付けてしまえばよかった。おれが部屋に戻るなり乗り込んできたのも、よっぽど待ち遠しかったのに違いない。おれと変わらないくらいのごつい男なのにかわいいと思ってしまうのは間違いではなかった。
 放り出していた手を伸ばし、シーザーの尻に触れる。押し拡げるようにしてから下向きに力を加えるとシーザーの体が落ち、丸まっていた背が大きくしなった。一気にくわえこまされたシーザーは苦しそうだが、びくびく震える内壁に包まれて気持ちいい。長く息を吐けば切なそうに眉尻を下げた視線とぶつかった。

「……〜ってめえ、いきなり……ッ」
「ずいぶんお待たせしちゃってたみたい、だからァ?」
「んぁっ! まだ……動く、なぁっ!」

 言いながら腰を揺らせば悲鳴のような声が生まれる。おれの腹に乗った手も強く力が入り、小さな優越感をもたらした。事前に慣らされていたとはいえ、いきなり突っ込んだのは少々酷だったかもしれない。いたわるように腰骨のあたりを撫でると気の抜けた声が上がった。
 騎乗位の格好だから、シーザーの足の間で揺れているものもばっちり見える。濡れた性器は後ろに挿入されても萎えたようすもなく、透明な滴が幹を伝っていった。シーザーの白い肌の中で赤黒いそれはひどく浮いて見え、よだれが出るほどいやらしい。暗闇の中で密着するのも悪くないが、人工の光の下で耽るというのも悪くないものだ。この光景を誰かに見せたいような、おれだけのものにしておきたいような複雑な気分で何度もまばたきした。

「まだ、焦らしてんのか……?」

 呟いたシーザーの声はやわらかく、芯がないように聞こえた。赤い頬で目をうるませ、とろけたような表情がやけに幼く見える。日中は決して見せない顔に内心ざわめくのを押し隠し、「ご不満?」と茶化した。

「気ィ遣ってやってるんだぜ、オメーがしんどくな……」
「いい」

 続く言葉は途中で遮られた。腹に置かれていたシーザーの右手がすべり、結合部にほど近いところを撫でて止まる。視線を誘導するような動きに逆らえず、思わず生唾を飲み込んだ。

「いい、から……早く、めちゃめちゃにしてくれ」

 これで男の経験がないっていうんだから一体どこで覚えてくるのか。舌打ちする余裕も失ってお望みのまま強く突き上げた。途端に跳ねる体が何度も収縮し、痺れるほど気持ちいい。耐えていたぶん、解放された衝動は大きかった。
 余裕ぶっていたり不機嫌そうだったはずのシーザーが、今やただただ嬉しそうな顔をしているのだからいとおしさばかりが大きくなる。吐息のような喘ぎをこぼす唇はさっきから開きっぱなしで、甘い声がいちいち心臓に悪い。シーザーの腰を掴んでいいように動かしてやれば喜ぶように内側がうねった。

「ジョジョ、いい……ぁ、ン…………もっと……」

 浅い息の合間にそんなことを言われてはもう焦らすこともできない。耐えに耐えていたものが限界に達するのはそれからすぐで、精液を受け止めるシーザーは結局おれが触れる前にイっていた。



「………………ハメられた…………」

 いや、さっきまでハメてたのはおれだけど。くしゃくしゃになったシーツに顔をうずめてこぼす。気づけばとっくに夜更けになっていて、広い屋敷の中で明かりがついているのはこの部屋くらいのものだろう。起き上がる元気もないおれを尻目に、先にシャワーを浴びたシーザーは涼しい顔で枕元に腰かけている。おれの部屋でタバコを吸うのはやめろと言い続けているが、いつのまにか灰皿が持ち込まれていた。
 疲れきった体はもうここから一歩だって動きたくないと訴えているというのに、ついさっきまで懸命に腰を振っていたんだから男はバカだ。精根尽き果てたっていうのはこういうことなんだろう、手足の先が泥になったような錯覚すら覚える。そんなおれとは対照的に煙を吐いたシーザーは実に満足げだ。心なしか、肌もツヤツヤして見える。なんとか首だけを動かして恨めしい視線を向けると忍び笑う声が落ちてきた。

「最高だったぜ、ジョジョ」
「おめーはサイテーだぜ……」

 疲れを隠さない声で返事すれば今度は明るい笑い声が響いた。こうなることが目に見えてたからしたくなかったのだが、結局はうまいこと乗せられてすべてはシーザーの思惑通りだ。つまり、我慢比べに負けたのはおれらしい。上機嫌に鼻歌でも歌い出しそうなのが憎らしかった。

「……明日はぜってーしねえからな」
「いいぜ。その気にさせてみせるさ」

 簡単に返したシーザーは自信たっぷりな笑みを浮かべている。本当にそうなりそうなのが腹の立つところだ。口の中だけでスラングを吐いて愛しいベッドから体を剥がす。シーツも替えなきゃあな、と思うとどっと疲れた気がした。

「明日の修業で失敗したらオメーのせいだからな……」
「ああ、大目に見てもらえるよう頼んでやるよ」

 鷹揚に返したシーザーは弟にでも向けるような目をしていた。とても今しがたまでとろとろになって喘いでいた男と同一人物だと思えないが、何度もこの目に焼き付けた光景が現実であることは疑いようがない。かといって嘘をつくのが下手なこいつのことだから、あれも演技ではないのだろう。おればかり疲れきっているのが本当に恨めしかった。

「ジョジョ、一緒にシャワー浴びてやろうか?」
「……結構だっつうの!」

 バスルームに続く扉を勢いよく閉めても笑い声が聞こえる。この二日間、おれの苦手な課題ばかりが出されていたのもあいつのせいなんじゃないかと埒のない考えがよぎった。単純な体力でいえば負けているつもりはないが、さすがに今日は分が悪い。ムカつくヤローだぜ、と思いながら胸のうちに浮かんだいとおしさは消えそうもないのだからシーザーという男は本当に、困った彼氏だった。